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グレン・エリック・ハミルトン『眠る狼』 [書評]

グレン・エリック・ハミルトンの『眠る狼』を読みました、幾つかの賞を獲得している本作ですが、今日的には、いささか物語のテンポが、特に前半悪いと思う。

帰ってきてほしい―十年前に故郷を離れ、海外で軍務についていたバン・ショウのもとに、ずっと音沙汰のなかった祖父からの手紙が届く。プロの泥棒である祖父の弱気な言葉に胸が騒いだバンは、急ぎ帰郷した。だが到着した彼を待っていたのは、頭に銃撃を受けた祖父の姿だった!人事不省の祖父をまえに事件の真相を追う決心をしたバンは祖父の仕事仲間に協力を仰ぐのだが、やがて、6百万ドル相当の工業用ダイヤの強奪事件が発生していたことをバンは知る。そして、祖父殺害の犯人と思しき男たちとの対決になるのだが・・・。
ここらあたりは、大変テンポ良く描かれている。そして、意外な結末がまっている。

物語の間で、現在ではなくて、過去のバンと祖父との思い出が挿話される。これの扱いがうまい。徐々にお互いを理解していく過程がうまく描かれている。



眠る狼 (ハヤカワ文庫NV)

眠る狼 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: グレン・エリック・ハミルトン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 文庫



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青山文平『鬼はもとより』 [書評]

青山文平の『鬼はもとより』を読みました。『つまをめとらば』で直木賞を受賞していらい、お気に入りの著者ですが、本作は、時代小説に経済の問題をもちこんで、面白い小説になっています。

物語の主題として、藩札(江戸時代に各藩が独自に領内に発行した紙幣のこと)が取り上げられています。わたしは、この藩札について知らなかったが、随分とたくさんの藩で発行されていたらしい。実通貨との交換を前提としていた藩札だが、実際には、それだけの実通貨を用意できた藩はすくなく、藩札の運用が行き詰った場合には、取り付け騒ぎや一揆、打ちこわしが発生したとも言われている。(wikipediaより)

ストーリーは、期せずして藩札掛となった奥脇抄一郎が藩札掛りの頭である佐島兵右衛門亡き後、藩札の増刷を求める家老に反対し、脱藩し浪人となる。ただ、この時期に培われた藩札掛としての知見が他藩の目に留まり、東北の小藩、島村藩の財政の建て直しに赴く。今風にいうなれば経営コンサルタントとなる、と言うお話です。

『鬼はもとより』というタイトルは、藩政の改革のためには、心を鬼にするだけの信念と実行力が必要だという、執政の梶原清明の姿からきていると思われるが、どんな鬼ぶりかは、本書を読んでください。

ただこの藩札、中央政府が認めていない通貨という意味で、ビットコインなどの仮想通貨とも似た部分がありますね。
本書では、どちらかと言うと、藩札そのものよりに、藩財政の建て直しのための案(産業振興案)のほうが中心になっており、もう少し、藩札について掘り下げてあったらよかったのにと思います。


鬼はもとより (徳間文庫 あ 63-1 徳間時代小説文庫)

鬼はもとより (徳間文庫 あ 63-1 徳間時代小説文庫)

  • 作者: 青山文平
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/10/05
  • メディア: 文庫



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ジャック・カーリィ『キリング・ゲーム』 [書評]

ジャック・カーリィの『キリング・ゲーム』を読みました。これも、お馴染みのカーソン・ライダーを主人公とするミステリーです。そこそこ読ませるのはさすがです。予想外の結末がまっているのだが、かなり中途半端な終わり方になっており、少し引っかかります。

ただ、犯人が、ルーマニアの生まれで、かのチャウシェスクの時代に、悲惨な幼児期を過ごしたことが関係している。そのチャウシェスクの時代に、出生率をあげることで、国の労働力を強化すると決めて、避妊と中絶を禁止して、子どもを大勢もつことを推奨した。これによって、ルーマニアの人口は増加に転じたが、今度は育児放棄によって孤児院に引き取られる子供が増えるという新たな問題が生じた。こうした子供は、ストリートチルドレン化するなど後々までルーマニアの深刻な社会問題となった。
といった、史実はわたしには初耳でした。少子高齢化が騒がれる日本だが、こんな馬鹿なことが日本で起こらないことを祈りたい。

犯人の側の視点からも物語りは描かれていて、それは良いのだが、ところどころ唐突に被害者となる人物の話がはさまり、かなり読みにくい。これはもう少し整理したほうが良いだろう。


キリング・ゲーム (文春文庫 カ 10-7)

キリング・ゲーム (文春文庫 カ 10-7)

  • 作者: ジャック・カーリイ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫



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誉田哲也『インデックス』 [書評]

誉田哲也の『インデックス』を読みました。
お馴染みの姫川玲子シリーズの短編ですが、全体として小粒な作品になっていますね。
池袋署強行犯捜査係に異動したあとの事件を扱った短編集だが、例のブルーマーダー事件の後日談もある。ただし、そのブルーマーダー事件がどんなだったか、私の記憶に無いのが玉に瑕ですが・・・。

本庁にかえる足がかりをつかんで、昔の姫川班の再構成を夢見る玲子だったが・・・。という設定。また菊田がでてきます。

「人間は、産んだだけで自動的に親になれるわけじゃない。たぶん、すごく努力して、たくさん苦労もして、人は徐々に、親になっていくんだと思う。それに耐える覚悟のない人間は、親になる資格なんてない・・・・」

という作中の玲子のことばが印象的です。


インデックス (光文社文庫)

インデックス (光文社文庫)

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/08/08
  • メディア: 文庫



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サンドローネ・ダツィエーリ『死の天使ギルティネ』 [書評]

サンドローネ・ダツィエーリの『死の天使ギルティネ』を読みました。『パードレはそこにいる』で、すっかり気にいった著者ですが、本書の中途半端な終わり方と訳者あとがきを読むと、結局三部作の二作目にあたるらしい。

ローマに到着した急行列車。しかし先頭車両の乗客は、全員死亡していた。イスラム過激派から犯行声明が出されるが、犯人の足跡は一向にたどれない。捜査に当るコロンバとダンテだったが、やがてたくみに人を操り、犯罪を実行させる殺し屋の存在に気付き、解明のためドイツに向かう・・・。
その殺し屋のうらには、旧ソ連の暗い影があるのだが、そのことと、ダンテが幼少期に誘拐されたことと関係がありそうなのだが、明確には語られない。

また、ダンテとコロンバとのそれぞれの特徴が前作より薄まってしまっているのと、話がゴチャゴチャしすぎており、結局どういう話なのかがわかりにくくなっています。とはいえ、三作目も読むとはおもいますけどね。


死の天使ギルティネ 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の天使ギルティネ 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: サンドローネ ダツィエーリ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/06/22
  • メディア: 文庫



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佐藤賢一の小説フランス革命18巻『革命の終焉』 [書評]

佐藤賢一の小説フランス革命15巻『粛清の嵐』から18巻『革命の終焉』を一気によみました。全18巻、とうとう辿り着いたという感じがします。2015年6月に読み始めたので、間で他の本も読んでいますが、2年以上がかかったことになりますね。

物語はいよいよ佳境にはいり、恐怖政治が始まる。手始めに、ジロンド派を粛清したロベスピエールは、次いで左派のエベール派を、その返す刀で、ダントン派をギロチンに送る。ただ、このころから、ロベスピエールもまた、自分の運命を悟った感がある・・・。

特に、17巻『ダントン派の処刑』で、刑場に送られる、ダントンとデムーランが交わす会話は印象に残る。

「常に正しくあることを、俺たちがあいつに推しつけてしまったからだ」
「革命がぶれなかったのは、あいつのおかげなんだ。右往左往せずに済んだのは、あいつのおかげなんだ。ああ、革命はマクシミリアン・ロベスピエールを必要としたんだよ」
「正義を武器に誰かを倒せば、その正義に自分も縛られざるをえない。逃れちまえば、自己否定になっちまう」


ナポレオンの登場まで、5年を待つことになるのだが、その間のことも知りたくなりますね。
最後、刑場に送られるロベスピエールに去来するものは、なんだったのか。

「愛国者でなければ、反革命とみなした。それは善でなければ、直ちに悪という論法だ。が、人間という生き物は、全き善でも、全き悪でもなく、両者の狭間にいる、あるいは両者を渾然一体として併せ持つ存在であったのだ。」と言う一節でてくるが、もっと深い人間に対する絶望であったかもしれない。

ただ、もっとも気になるのはこのフランス革命、およびロベスピエールが、現代のフランスでどのように評価されているのか、ということですね。


革命の終焉 小説フランス革命 18 (集英社文庫)

革命の終焉 小説フランス革命 18 (集英社文庫)

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/05/20
  • メディア: 文庫



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サンドローネ・ダツィエーリ『パードレはそこにいる』 [書評]

サンドローネ・ダツィエーリの『パードレはそこにいる』を読みました。私にとって、初めての著者でしたが、主人公二人の造形に成功しており、大変面白い作品になっています。

ローマ近郊で、ある母子が行方不明になる。母親は惨殺死体となって発見され、6歳の少年の消息はつかめない。警察は父親を容疑者とみなして逮捕する。この事件の捜査に当たるのは、ある事件で、大怪我をし、退院したものの、休職中である女性刑事コロンバ・カッセリと、彼女と相棒を組むのは、失踪人捜索の専門家であるダンテ・トッレ。彼は、6歳のときに、何者かに誘拐され、農場のサイロに11年間も監禁されていたという特異な経歴の持ち主で、その影響から閉所恐怖症でもある。

そんな弱点を持つ二人が、協力しながら、事件を追う。この事件の裏に、幼い自分を誘拐し、11年間にわたって監禁した犯人“パードレ”がいる―そう考えるダンテだったが、その事件の裏には大きな陰謀が隠されており、やがて意外な人物がパードレとして浮かび上がってくる・・・。

捜査の途中で、ふたりが警察に追われることになる、また、最後はダンテに命の危機が迫り、緊迫の展開をします。次のシリーズも読まなければ、と思わせるには十分な作品です


パードレはそこにいる 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

パードレはそこにいる 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/25
  • メディア: Kindle版



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映画『ダンケルク』 [映画]

映画『ダンケルク』を見てきました。IMAX2D版で見たのですが、褒めるべき点はこのIMAXの観点だけです。映画としてはどうでしょうか、いまいちだと思います。
物語に芯がない。無論、ダンケルクの撤退が中心なのだが、スピットファイアの飛行機乗りであったり、民間でありながら救出に協力した一家がであったり、救出される側の兵士が描かれるのだが、それぞれの背景が描かれないので、散漫な印象を与える。映画としてどうかと思う。
ただ、IMAXの音響は素晴らしく、本当に自分の耳のそばを銃弾が飛んでいく感じがします。
評価は☆☆☆です。

http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/
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映画『関ヶ原』 [映画]

映画『関ヶ原』を見て来ました。評判はイマイチですが、それなりに見所もありました。
ただ、前半はいささか詰め込みすぎでしょう。映画だけでは理解するのが難しいと思います。大河ドラマの黒田官兵衛や真田丸の話を思い出しながら、話を繋げるという行為が必要になります。予備知識がないと苦しいと思う。有村架純は、まぁ余分でしたね。

石田三成が敗れ、城の前で縄につながれている時に、前を通りかかる三人の武将、福島正則、黒田長政、小早川秀秋の対比は面白い。黒田長政はさすがですが、福島正則ってあの程度人物だったのでしょうか。
岡田、役所の主演の二人を除けば、平岳大の島左近が印象的な役どころでした。
評価は☆☆☆と半分です。

http://wwwsp.sekigahara-movie.com/sp/
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中川毅『人類と気候の10万年史』 [書評]

福井県に水月湖という湖があることをご存知ですか。わたしは、講談社(ブルーバックス)から出ている中川毅さんの『人類と気候の10万年史』を読んで初めて知りました。この著者、中川毅さんは立命館大学の古気候学研究センター長でもあります。

「年縞」(ねんこう)。聞き慣れない言葉だと思いますが、この樹木の年輪に相当する「縞」は、湖沼の底の泥層に残されています。その「年縞」が数万年にわたって連続して残っている湖沼は世界でもごくわずか。その、理想的な場所が福井県の水月湖なのです。水月湖の「年縞」は、同じ条件で同じ場所で、きれいに連続した「年縞」が、1年刻みで7万年分も残っているというのです。今では、地質学的年代決定での事実上の世界標準となっているそうで、最近では、中学の教科書にもこの話は載っているらしいです。ところで本書によると
地球の自転軸の向きや公転軌道の形と連動して気候が変動するというミランコビッチ理論に従うならば、減少しているはずの温室効果ガスが、産業革命よりもはるか以前から上昇している、つまり、人間が気候を左右するようになった歴史は、100年前ではなく8000年前にさかのぼるそうです。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の予測でも、21世紀の100年で平均気温が大きく変化するかもしれず、人類存続の危機と恐れられているが、氷河期の終わり頃は数年でそれくらいの気温変化があったと思われる。ある臨界点を超えたとき、突然、世界気候は激変するかもしれない。

ということのようで、近年、各地で「何十年に1度」という豪雨が毎年発生し、また今年は、関東地方では奇妙な夏でしたが、これらは変化の予兆なのでしょうか。
いずれにせよ、
『先進国を生きる私たちが、「先を進んで」いるような気分でいられるのは、現代の気候がたまたま私たちのライフスタイルに適合しているという、単なる偶然に支えられてのことに過ぎない。』
という著者の言葉は耳に痛いですね。
 また、次の一節には、研究者としての矜持を感じました。

2006年の掘削は、それ自体は単なる穴掘りであり、学術的な成果であると見なされることは少ない。(中略)、ひとつだけ自画自賛を許していただけるなら、その後に続いた水月湖研究の栄光のドミノ、その最初の1個を倒したのは、あの暑い夜に「完全連続」を達成するまで決して引き下がらなかった、私たちの愚直な掘削だった思っている。



人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

  • 作者: 中川 毅
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 新書



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