雪国 [和書]
友人がブッククラブ(読書会)をやっていて、来ない?と言われたんです。
その課題が『雪国』だったので、今更ながら読んで見ました。
あらすじ
とある初冬、島村は、趣味の山歩きのため1年前に訪れた東北の温泉場(新潟県湯沢町)に再度向かっていた。
島村は列車の中で、病気の若者に付き添っている娘葉子を目にする。
島村は東京に妻子と共に住んでいて、働かなくても食べていける財産があり、ときおり翻訳などをしていた。
温泉場には馴染みの芸者駒子がいる。
駒子は20歳前後だが、それなりに苦労していた。
以前は東京で旦那さんに奉公していたが死なれたり、結婚話がもちあがったが断ったり、葉子が付き添っていた病人の許婚だったという噂もあった。
島村が東京に帰るときに駒子は駅まで送りに行くと、葉子が若者が危篤だと知らせにくる。
しかし、駒子は島村を見送るので帰らないと言って
また2月に来ると言っていた島村だが、もっと後になってから温泉場を訪れる。
村人が映画鑑賞に使っていた小屋が火事になり、駒子と島村が駆けつけると、火の海なった2階から葉子が落ちてくる。
◇ ◇ ◇
『雪国』は川端先生が何回かに分けて掲載した話をまとめたものですし、人間や自然の描写が美しいことで有名なわけですから、あらすじを書くのは意味がありませんが、一応覚えていた筋を書いてみました。
下記の理由で、ところどころ意味がわからないところがありました。
・ふりがなは振ってあったのですが、言葉自体がよくわからない。
・主語がないし、カギ括弧がくくられた文章がふたつ並んでも同じ人の会話だったり、会話が誰が言っているのかわからないところがあった。
・唐突に場面が変わる。特にラブシーンは書かれていないので、なんとなく夜を過ごしたと想像するしかない。
でもって、私は純文学はそもそも苦手なので、どうして名作なのかよくわかりませんでしたが、それでも飽きずに読めてしまうのはやはり凄い作品の証なのでしょう。
読書会では、どうして火事で大騒ぎなのに天の川を見ている余裕があるのか、縮みの知識が得られてよかったという意見がありました。
でも、6人いて面白いと言った人はひとりでした。
その人は悲しい恋愛物語が好きなんだそうです。
あとは2、3回読んだら好きになったという人もいました。
探偵ガリレオ [和書]
警視庁捜査一課の草薙は、難事件にぶつかると、帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川を訪れた。
帝都大学で同じバドミントン部だった湯川に助言を求めるためだった。
突然若者の頭が燃え出したり、行方不明だった男のデスマスクが池から見つかったり、凡人には解決できない難問を天才湯川先生が見事に答えを出していく。
◇ ◇ ◇
『容疑者Xの献身』を読んだことがあるので、手にとってみました。
最初はずっと短編だったとは知りませんでした。
ガリレオ先生の初登場ということですが、どうしてそう呼ばれるようになったかは書いてなかったように思えます。
(読み飛ばしてしまったかしら……)
『容疑者Xの献身』を読んだときのブログに、アメリカのドラマ『ナンバーズ』を思い出してしまうと書いた気がしますが、ガリレオシリーズは1997年に連載が始まったようで、ガリレオ先生のほうが先に活躍したのかもしれません。
湯川先生は福山雅治が演じていたので、どうしてもその顔を思い浮かべてしまいますが、作者は佐野史郎をイメージして書いたと後書きに載っていました。
1997年だと福山雅治はまだブレークしてませんものね。
「国連運輸部鉄道課」の不思議な人々 [和書]
タイに本部がるESCAPという国連の組織に勤務する日本の鉄道マンの奮闘記録です。
鉄道のことを知らない人にはわからないかな、という箇所もありますが、読んでいるとだんだんおもしろくなりました。
いくつかエピソードをあげてみますと…
ESCAPには世界のいろいろな国々から人が派遣されてきています。
ソ連(旧)から来ている人は、どうも実はスパイらしいというというのが公然の秘密。
普段の業務のかたわらに国連でせっせと情報を集めては祖国に流していたらしいです。
国連の職員には外交特権があって、車を1台免税で輸入できます。
タイでまともに外国車を買うともの凄い関税がかかります。
でも、タイのお金持ちはどうしてもベンツが欲しい。
国連の職員は5年間使ったあとには自由に車を売ることができます。
そこで、タイのお金持ちに5年間使用したベンツを売って小銭を稼いでいる職員がほとんどとか。
それでも、日本から来た職員は、こいういうことにはあまり首を突っ込んでいなかったそうです。
日本人て、本当にまじめですよね。
国連といえども、普通の会社で起こるようなパワハラ、権力争い、不倫等がやはりあって、共感できるところが多くておもしろかったです。
さぶ [和書]
山本周五郎を読むといいよ、と勧められたので珍しく時代物を読んで見ました。
時は江戸時代。
栄二と「さぶ」は、芳古堂という表具・経師を扱う江戸で一流の店の職人さんです。
同い年で、子供の頃から奉公していました。
栄二は男前で女性からモテモテ。
職人としての腕もぴかいち
一方「さぶ」のほうはルックスもいまいちで、栄二ほどには仕事もできず、性格も自信なげなところがありました。
それでも、ふたりは親友でした。
ところがある日、ふたりで仕事に行ったお得意さんから、栄二は泥棒の濡れ衣を着させられてしまいます。
お得意さん所有の金襴が、栄二の仕事袋に入っていたというのです。
栄二は、お得意さんへの出入りを禁止され、のれん分けした兄弟子の店で働くように言われます。
身に覚えのない栄二は、荒れに荒れてしまいます。
兄弟子のところを飛び出し、何日も飲んだくれて放浪したあげく、芳古堂に怒鳴り込んで捕まり、捕まった先で岡っ引きを半殺しの目にあわせてしまいます。
罪人にはなりませんんでしたが、人足寄場というところに送られたのでした。
そこで栄二は、芳古堂をはじめとする世間を恨み、いつか復讐してやると思いながら、悶々と過ごすのでした。
そんな栄二を心配して、「さぶ」は休みを利用して差し入れを持って寄場に会いにくるのですが、かたくなになった栄二は会おうとしません。
やがて、芳古堂に栄二に会いに行っていることがばれ、「さぶ」は芳古堂を首になってしまいます。
果たしてふたりの運命は?
栄二の仕事袋に金襴を忍ばせたのは誰?
◇ ◇ ◇
タイトルは「さぶ」ですが、主人公は栄二です。
栄二の人生に「さぶ」が大きく影響を及ぼしたからでしょう。
でも、「さぶ」がいなくても、栄二は何とかひとりでやっていたような気がしますが。
後ろの解説に、純文学と大衆小説の間だと書かれていましたが、なるほどそうだと思いました。
最後にオチがあるので、大衆小説(エンターテイメント)と言えるし、栄二がいろいろ悩むところは純文学ぽい気がしました。
でも、栄二が悩むところは、なんだかイライラしました。
そこまで荒れなくても、そこまで世間をうらまなくても、という気がしたからです。
芳古堂にしてみれば、お得意さんから盗みの苦情が来たら、処分しなくちゃならないし、首にしないで、のれん分けしたところへ異動させたのですから、かなり温情があった処置ではなかったのではないでしょうか。
人足寄場というのは刑務所ではなく、職業訓練所とホームレス対策を合わせたような所で、身元引受人がいない人を住み込みで働かせ、賃金も与えるというところです。
あの長谷川平蔵が考えたそうです。
江戸時代にもうまいことを考える人がいるもです。
全体的に漢字にふりがなが振ってあって、とても読みやすかったです。
猫町 [和書]
30分ほどで読んでしまいました。
独立した1冊の本になっていますが、『猫町』は短編のエッセイ。
半分以上は、本文のイメージに沿った猫や町並みの写真になっています。
著者の萩原朔太郎が散歩をしていると、不思議な見知らぬ町に迷い込んでしまいます。
といっても、SFでもファンタジーでもありません。
朔太郎は方向音痴なので、いつもの道順からはずれてしまい、逆方向から町に入ると、違った見え方がしたのでした。
その不思議な見知らぬ町が猫の町です。
これだけの話なのですが、朔太郎が書くとどんどん引き込まれていくのですからさすがです。
明治時代の小説家の文章は読みにくかったりするのですが、朔太郎は詩人だからでしょうか、そういうことは全然ありません。
仮名遣いも現代風になっていて、すんなり読めます。
コカインやモルヒネでトリップした、というようなくだりがあってびっくりさせられますが、当時は厳しい規制はなかったのでしょう。
村上春樹の小説にも猫の町がでてきますね。
私のあてずっぽうですが、このエッセイからヒントを得たのかもしれません。
告白 [和書]
中学校の化学の教師森口は、教師を辞める決心をしました。
退職するにあたり、担任をしていた1年B組の生徒の前で驚くべき告白をします。
森口先生はシングルマザーで、4歳になる娘愛美がいました。
愛美はプールに誤って落ちて事故死したことになっていたのですが、実は1年B組の生徒の中に愛美を殺した犯人がいると言うのです。
この告白だけでも大変なことなのに、これがきっかけとなって、どんどん恐ろしい事件に発展していくのでした。
◇ ◇ ◇
『告白』は第6章から成っていて、各章ごとに違った登場人物の独白で物語が書かれています。
つまり、各登場人物が自分の言い分を話すことによって、物語が進行していきます。
第1章は「聖職者」というタイトルがついていて、森口先生がひとりで語っている設定になっています。
この第1章はこれだけでうまくまとまっていて、ちゃんとおちがあり、この章だけでりっぱな短編として読めます。
最初、短篇集なのかと思ったくらいです。
全体的にはすこぶる日本的な話だと思いました。
(多分私が翻訳ミステリーばかり読んでいるからそう思うのでしょう)
母と子供の密接な関係が物語の根本に流れています。
愛美の死亡に責任があるとされる二人の男子中学生はマザコンという設定ですし、森口先生は娘のために大胆な行動を取ってしまうのです。
作者が女性だからかもしれませんが、お父さんの存在がまったく見えてきません。
これはとても日本的です。
外国の小説ドラマでは、そんなに母と子の関係が密接ではないように思えます。
森口先生の教え子の中に美月という女の子が出てきます
ちょっと、妙な気持ちになりました。
お話の中の子は、「みづき」で、私は「みつき」なんですがね。
Sの紋章 [和書]
『Rの刻印』に続く読者参加型ミステリーの第2弾です。
今度の舞台はイギリスの湖水地方。
前回の物語でエジプトで父親を殺害された辰平は、そのときに見事に事件を解決したミックに弟子入りをしていました。
そんな辰平とミックが湖水地方を訪れていたときのこと。
辰平は偶然、湖で女性がピストル自殺をする瞬間を目撃してしまうのでした。
自殺した女性は日本人で、大きな古い館に住むイギリス人と結婚していた富貴子でした。
実は富貴子の夫も1か月ほど前に、何者かに殺害されて、犯人は捕まっていませんでした。
ミックと辰平は日本人関係者の通訳もかねて、地元の刑事ネイサンに協力して事件を捜査し始めるのでした。
その後、お屋敷が火事になったり、富貴子からの暗号で書かれたメッセージが発見されたり、新たな死体が見つかったりして謎はふかまるばかり。
読者参加型ミステリーなので、結末は書かれていません。
本の後ろについている用紙に自分の推理を書いて応募すると、優秀な推理を出した人には湖水地方への旅行がプレゼントされます。
推理を出した人には、出版社から別途解決編が送られてくるらしいです。
自分で解けなかった人は春になるとHPに解決編が発表されるので、それまで待つしかありません
一作目のエジプトでのミステリーのときには、3回位読み返してみたのですが、誰が犯人かさっぱりわかりませんでした。
今回もきっと難解なんでしょうね。
お正月休みに読み返してじっくり考えてみます。
小さいおうち [和書]
直木賞受賞作とか芥川賞受賞作とかこれまで少々読んでみたことがありますが、毎度好みではなく、賞をとった作品なんて二度と読むもんか
けれども、縁あってこの『小さいおうち』を読んでみて、なかなかおもしろかったです。
タキおばあちゃんは88歳。
山形の田舎で生まれて、女中奉公ひとすじで働いてきた。
その経験を生かして家事の本を書いたら大ヒット。
編集者から次の本の相談を受けて、自分の過去を振り返ってみるのでした。
若い頃の思い出は、なんといっても戦前・戦中、時子奥様に仕えて、東京郊外の赤いレンガの家に住んでいた頃のこと。
昔の日本は中流の上の家庭だと、サラリーマン家庭でも女中がいたんですね
時子奥様は最初の旦那様を亡くし、忘れ形見の恭一ぼっちゃんと女中のタキを連れておもちゃ会社勤務の男性と再婚していました。
物語の大半は、タキが語る昔の日本の日常生活です。
それが読んでいて楽しかった。
若くて美しい奥様と家族のために、タキはまめまめしく働きます。
省線、ちんちん電車、京橋のアラスカ、コロンバンのケーキ、提灯行列なんて言葉がぽんぽん出てきます。
私の両親くらいの世代が読めば、もっと懐かしさ満載なんでしょうけれど、私でも聞いたことのある言葉がでてきて大うけでした。
太平洋戦争が始まる前に、オリンピックや万博開催の話が日本にあったことも本で知りました。
舞台設定と風俗だけで人間的な臭みがないというアマゾンのコメントがありましたが、私はどろどろした感情の吐露みたいな作品は苦手なので、充分満足でした。
でも、戦争が激しくなってタキが山形に帰るところや、久しぶりに上京して奥様と再会するところなんかは眼がうるうるしました。
誰にでもあるような出来事でも、作家の力量でジーンとくるものなんだと関心しました。
終わりのほうで、タキが、死んでしまった奥様に対して後悔していることがあるらしい、ということが甥の息子によって解明されていくのですが、その辺はネタばれになるので書かないでおきます。
編集者の仕事―本の魂は細部に宿る [和書]
記憶の放物線 [和書]
書評家の池上次郎さんが、自分の過去のエピソードや知人から聞いた話を折り込みながら、翻訳小説を紹介しています。
その中に出てくる本はどれも知らないものばかりでした
まあ、誰でも知っている本を上げていたら、書評家としてかっこ悪いというのがあるかも知れませんが。
でも、北上次郎さんは以前に自分のオールタイムベスト10の中に、私の好きなゴダードの『さよならは言わないで』を入れていたので、いい人だわ
北上次郎さんはどうも、人間の悩みや葛藤等がよく描かれている、ちょっと湿っぽい系がお好きなようです。
本の中で、私もうなずけるところをちょっとメモして見ました。
中年になってから運転免許を取った友人がいて、夜ひとりであてもなくドライブするのが楽しいという話を聞きます。
そこで北上さんは、深夜ひとりで目的もなくドライブするのは、ひとりになりたいということがあるのではないか、と推測するのですが、私も男性はふとひとりになりたい瞬間があるのだと思います。
どんなに家族を愛していても、たまには離れたいと思う男性、結構多いのでは?
また、ダグラス・ケネディの『仕事をくれ。』という物語を紹介していて、退職してのんびりするのではなくずっと働いていたい人の例をあげて、ワーカホリックの人たちにとっては、仕事こそが人生なのだ、と言っています。
会社から切り離されると何をしていいか困ってしまうのは、日本人男性だけではないのですね













