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マンガ:西島大介「アトモスフィア」 [Book]

”自分自身”を赦(ゆる)せますか?

アトモスフィア (2)

アトモスフィア (2)

【公式サイト】
http://www.simasima.jp/

西島大介氏のマンガとの出会いは、「凹村戦争」という一冊の本から。この人の画もかわいい感じなのだが、中身はSF。かなり画の空間には空虚な部分を持ってくることが多く、一瞬の浮遊感を感じさせる画風である。
最近、「世界の終わりの魔法使い」の第二巻も出た事で、また他の作品を読み直すともあり、今後時を見て西島大介氏のマンガを紹介して行こうと思う。

「アトモスフィア」は書き下ろしで2巻構成。話としては、この現代で自分のドッペルゲンガーが何人も何人も現れ始め、その本人の存在を赦(ゆる)せなくなり、殺しにくるという話で冒頭は始まる。

【あらすじ】
主人公の女の子は、彼氏や他の人間、世の中までどうしようもないバカだと心の中で見下している。そして自分の中でそれらを赦している。どうしようもないバカだと思いつつもつきあっていた彼氏とは別れてしばらくしたある日、彼氏が自分の部屋で女とエッチをしているではないか。本当、どうしようもないバカだ、その女もそうだ、と思ってその女の顔を見ると・・・なんと自分自身なのだ。
わけがわからずとも、どうでもよくなった女の子は自分から出て行く。そして行き場に困ったところに携帯電話に”自分自身”から電話がかかってくる。「携帯電話、返してくれない?」と。
そのもう一人の”自分自身”と人気の無いところで待ち合わせ携帯電話を渡そうとするが、その女の子は拒否する。その瞬間、もう一人の”自分自身”は形相を変え襲いかかってくる。殺される・・・その瞬間、陰から数人の人間が現れ、もう一人の”自分自身”を集団で殴りつけ殺害する。もう一人の”自分自身”は意味不明な言葉を発しながら息絶える。
危ないところを助けられた女の子だが、その女の子を助けた集団はその女の子と同じようにもう一人の”自分自身”のお陰で行き場を失った”本人”たち。彼らはドッペルゲンガーを「分身」と呼び、その行き場を失った”本人”達で構成される組織を作り、日々「分身」たちと戦い続けている。
女の子はその組織に案内され、そこのリーダーの男に組織に入るように薦められる。女の子は行き場も無いので、その「分身」の葬り活動に参加する事になる。
そして、世界は加速し、”本人”の「分身」の「分身」が現れるようになり、またその「分身」が・・・という風に話は進んで行く。
<あらすじここまで>

よくある「もう一人の自分」との戦いの話とはちょっと違う。個人的には藤子・F・不二雄氏の「ひとりぼっちの宇宙戦争」をちょっと思い出してしまったのだが、この話だと世界中全ての人間に自分自身の「分身」が存在し、その「分身」の「分身」も、「分身」の「分身」の「分身」もいるというかなり救いの無い世界である。
そのうち、「分身」を見分ける機械が出てきたり、「分身」に仕立て上げて邪魔になった”本人”をぶっ殺したりと、人間がいかにもやりそうな「対策」と、「悪知恵」をちゃんと盛り込んでいる。そして、止まらなくなった世界で増え続ける「分身」に、”本人”も、そして他の「分身」も、ある意味諦めのような状態となり、ひたすら殺し壊そうとする人、共存しようとする人、それぞれの思想が生まれ始める。

しかし、止まらなくなった世界は誰にも止められず、崩壊に向かって世界は進んでいく。

最後の最後、このマンガには大オチが待っています。
モチロン、ここではネタばれになるので言いませんが、その最後のオチに
納得するか・・・
意外と思いつつも感心するか・・・
時間を返せと本を投げてしまうか・・・は、読んだ”自分自身”で判断してもらいたい作品です。

僕は・・・嫌いじゃなかった、けど、ひっちゃかめっちゃかになったストーリーは、結構強引に落とさないと、終われないものだなあと、マンガや小説、映画のようなストーリーを作る人たちは大変だなと冷静に思ってしまいました。
しかし、そのオチの元ネタをリアルタイムで分かっているのは、僕くらいの歳がギリギリかも?今もあるのかなあ(ちょっと含ませてみました。フフフ)

【かわいい画の少し残酷なSFマンガは、意外な切れ味があります】
SF以外でも西島氏の本は面白い。常に可愛さと残酷さを持ち合わせています。

凹村戦争(おうそんせんそう)

凹村戦争(おうそんせんそう)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/03/24
  • メディア: 単行本


アトモスフィア〈1〉

アトモスフィア〈1〉

  • 作者: 西島 大介
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本


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マンガ:山川直人「コーヒーもう一杯」 [Book]

カフェが増える中、落ち着いて過ごせる喫茶店はありますか?

コーヒーもう一杯(1)

コーヒーもう一杯(1)


Amazonでマンガ本を買ったときにレコメンドされたマンガがこの「コーヒーもう一杯」。
なんか、紹介を見てみると、ちょっといい話がいろいろオムニバス形式で描かれているとのことで、ちょっと興味があり買ってみました。

画の方を全然見ずに買ったのだけど、結構かわいい画でちょっと想像と違っていたけど、本秀康とかアノ辺のかわいい系の画は嫌いではないので好感が持てました。

画風は妙に画面全体が「濃い」感じで、印象的には線が多いなあと。人の描画はかわいいけど周囲の風景がそういう感じが多い。基本的にこのマンガにでてくるのは、カフェとかそういうおしゃれなところではなく、いわゆる喫茶店という感じ。しかも、そんなに新しそうなお店は出てこないで、ほとんどが昔からやっているという古めかしくて少し暗い感じのお店の描画が多い。この辺が、線の多さ、周囲の風景の濃さがうまく生きているのではないだろうか。

お話自体は、コーヒーがメインの話だったり、話の伏線としてコーヒーが出てきたり。もしくは全然話には関係なくてもコーヒーが出てきて、そのそれぞれのお話の主人公の意識の中にコーヒーの香りを印象付けるようなエッセンスとなっている。そしてそれは現実の中だったり、SFだったりとかなり幅広い。個人的にはSFよりは現実味があって、ほんのりコーヒーの苦さが残る結末というのが結構好きな話が多い。

路上ミュージシャンの演奏を聞きに来てはミュージシャンに1万円を渡すお嬢様と執事、猫の恩返し、占いを信じる彼女、高級なコーヒーを頼むと殺されてしまうのではないかと妄想する男、隣に住む別居中の子持ちの女性に惚れる男、幻の喫茶店で幻の男の妻と娘の画を描く絵描き、突然の雨に喫茶店に駆け込んで上着を忘れた男に恋をする店員の女の子。
それぞれにコーヒーが関わり、コーヒー色のような少し昔の日本を感じてしまうレトロ感が面白い。

【一巻目が一番いいのは世の常。だけど二巻目も僕は好き】

コーヒーもう一杯 II (2)

コーヒーもう一杯 II (2)

  • 作者: 山川 直人
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2006/04/24
  • メディア: コミック


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本:恋するたなだ君/藤谷治 [Book]

恋するたなだ君

恋するたなだ君


【あらすじ】
たなだ君は29歳の地図を作る会社で経理をしている独身男性。身長186cm。地図の会社に働いているにも関わらず方向音痴。とても平凡で友達があまりいない。もちろん彼女もいない。
ある日たなだ君は、相棒のカブトムシには死なれ、会社の上司には説教され、好意を持っていた女性にも振られる。気分を変えるべく、古くて小さいけど大好きなサンルーフ付きの愛車でドライブをはじめる。持ち前の方向音痴のため、見知らぬ街に来てしまったたなだ君。元の道を戻ろうとしたとき、光り輝くものが見えた。それは女性の後ろ姿。一気にその姿に惹かれてしまったたなだ君は、一目顔を見ようと暴走を始める。なんとか追いつき、クラクションで女性を振り向かせる。そしてサンルーフからノッポな体を出し女性に手を振る。戸惑った女性は走り出し、ある建物に入って行く。それを見送ったたなだ君。もっと彼女のことが知りたい!そう思ったとき、車は制御を失い、動き出す。そして先ほどの建物とその隣の建物との細い路地に車は突っ込んで行く・・・。
<あらすじここまで>

タイトルだけに惹かれて思わず買ってしまった作品。主人公のたなだ君が、後ろ姿だけで恋をした女性のことが知りたくて追っかけて行き、その追っかけた先で興奮のあまり問題を起こしてしまう。その結果、様々なクセのある人間と出会い、その女性の事を知り、そしてその女性といかに恋をするか?という感じなんだけど、かなりはじけてます、たなだ君。真面目でおとなしい人格なんだけど、もう恋に一直線。そのまっすぐさから思わぬ行動をしてしまうあたりがこの話の読みどころである。

クセのある人間というのが、常に違う名前を言って混乱させる女性が入って行ったビルの2人組の守衛や、常に桃を食べているビルのオーナーの秘書的存在の人物、ゲストルームと呼ばれるどうみても牢屋である部屋に監禁されている愚痴ばかりの男、そしてそのゲストルームを見張るおじいさん、そしてその女性と何らか訳ありな事情のあるビルのオーナー。たなだ君が恋する女性もかなりクセがあり、読んでいるとそのクセに虜になります。

話はドタバタが続く感じなんだけど、最後にたなだ君が敵視していたビルのオーナーと、その女性との関係が、嗚呼、そういうことなんだー。という感じ。まあ、ありがちと言っちゃありがち。
果たしてたなだ君の恋は実るのか実らないのか?その辺は読んで欲しいなあ。

ただちょっと残念なのはこういう収拾の付かなさそうなドタバタ劇を収める方法がちょっと非現実的、SFチックであまりオチとしては好きではなかったなあ。そこまで結構あり得なさそうだけどリアルで続いてきただけに、そこ、そうするかーって感じで解決させてしまったので・・・。まあ、その場面はそうでもしないと乗り切れないんだけど。

たなだ君の一生懸命さがなかなか面白いのでオススメです。


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